ECサイトの特定商取引法の書き方とポイント

2017/8/4

本ブログはECのマーケティング(集客)やリプレイス、オペレーションの改善をご支援させていただくコンサルタントが執筆するコラムです。
EC事業に課題を感じているお客様が、改善のアクションを考える際に参考にしていただけますと幸いです。

ECサイト・ネットショップを開業する場合、始めに「特定商取引法に基づく表記」を作成する必要があります。
今回は、これから開業する方向けにECサイト・ネットショップに必須の「特定商取引法に基づく表記」の書き方について解説致します。

特定商取引法とは

特定商取引法とは悪質な事業者から消費者を守ることを目的として、トラブルが生じやすい7つの取引形態について、事業者が守るべきルールと消費者を守るための仕組みを定めた法律です。

トラブルの多い事例などをベースに制定されているため、特定商取引法について勉強しておくことは身を守ることにつながります。
面倒くさがらず、しっかりと学習することをおすすめします。

7つの取引形態

  • 訪問販売
  • 通信販売
  • 電話勧誘販売
  • 連鎖販売取引
  • 特定継続的役務提供
  • 業務提供誘引販売取引
  • 訪問購入


引用元:「非エンジニアでも大丈夫!はじめてのAWS設定方法」

ECサイトにおける特定商取引法

ECサイトは特定商取引法が定める7つの取引形態の内、通信販売に該当し、通信販売について定めた9つのルールを守りながら運営する必要があります。

  1. 広告の表示
  2. 誇大広告等の禁止
  3. 未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止 ( オプトイン規制 )
  4. 前払式通信販売の承諾等の通知
  5. 契約解除に伴う債務不履行の禁止
  6. 顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止
  7. 行政処分、罰則
  8. 契約申込みの撤回または契約の解除
  9. 事業者の行為の差止請求


参照元:経済産業省「特定商取引に関する法律について」

ECサイトの運営に必須の項目と省略可能な項目

特定商取引法では過去のトラブルにもとづき、商品ページや特定商取引法に関する事項に掲載すべき事項について明確に定めています。
ECサイト・ネットショップでは特定商取引法の定めに基づき以下の13項目を記載する必要があります。

また、特定商取引法では所定の条件を満たすことで実態に合わせて、一部項目を省略することを認めています。

広告の表示に関するルール

  1. 販売価格(送料についても表示が必要)
  2. 代金の支払い時期、方法
  3. 商品の引渡時期
  4. 返品・キャンセルに関する事項(返品の特約がある場合はその旨含む。)
  5. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  6. 事業者が法人の場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
  7. 申込みの有効期限があるときには、その期限
  8. 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその金額
  9. 商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
  10. いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
  11. 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容
  12. 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
  13. 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス

省略可能な項目と条件

特定商取引法では以下の条件を満たすことで実態に合わせて、一部項目を省略することを認めています。

消費者からの請求に基づき「遅滞なく」各項目を提供できることを明示し、実際に提供可能な対策を講じている場合

表示事項販売価格・送料その他消費者の負担する金額
全部表示したとき全部表示しないとき
代金等の支払時期前払の場合×
後払の場合
代金等の支払方法
商品の引渡時期等遅滞なく行う場合
それ以外×
返品に関する事項(返品の可否・返品の期間等条件、返品の送料負担の有無)××
販売業者の氏名(名称)、住所、電話番号
法人であって情報処理組織を使用する広告の場合に法人においては代表者名または責任者名
申込みの有効期限××
商品の隠れた瑕疵に関する販売業者の責任負う場合
負わない場合×
ソフトウェアを使用するための動作環境××
販売数量の制限等特別の販売条件××
請求により送付する書面の価格××
(電子メールで広告するときは)電子メールアドレス××

販売者の氏名、住所なども省略できることが分かりますが、あまりに情報を省略しすぎるとユーザーは不信感を抱くでしょう。
ECサイトにおいて会社情報はトップページの次に見られるページです。
あくまでもユーザー視点に立ち、消費者が安心して買い物ができるようにしっかりと表示を行いましょう。

特定商取引法に基づく表記を行う上で注意すべきポイント

特定商取引法に基づく表記には必ず「返品特約」を記載しましょう。
ECサイトにおける最大のリスクは消費者都合による返品、キャンセルです。
通販でのキャンセル率は実店舗の2倍とも言われ、米国のアパレル領域では30%が返品されており、収益を圧迫しています。

特定商取引法では通信販売に関して商品到着後8日以内であれば返品可能とされており、消費者は送料負担のみで返品できます。
ただし、返品に関する特約を表記している場合には返品を断ることもできるようになります。返品リスクを抑え商売を軌道にのせていくためには「返品不可」などの条件を明記しておく必要がありますが、 一律に返品不可とするのではなく初期不良に対する対応や、返品可能なケースについても明記しておくことが望ましいです。

ECサイトとクーリングオフ

特定商取引法における有名な制度としてクーリングオフ制度があります。

クーリングオフ制度とは商品を購入した後、一定期間内であれば無条件で購入契約を解除できる制度です。

クーリングオフ制度は訪問販売などで十分な検討ができないまま契約を結んでしまうトラブルが多発したことを背景に、
冷静に考える時間を設けることで不本意な契約から消費者を保護する目的で創設されました。

成立の背景から、クーリングオフは訪問販売等で消費者に冷静に検討する時間を与えずに契約を結ぶ取引に対して適用されます。
ECサイトにおいては消費者は商品について十分に比較・検討の上、
自らの意志による購入が可能として、クーリングオフは適用されていません。

通信販売における返品ルールとクーリングオフ制度は期間が同じ場合が多いため、混同されがちですが全くの別物です。
ECサイトを運営していく中ではクーリングオフを希望されることも多々ありますので、違いについて説明できるようにしておきましょう。

特定商取引法の事例

Amazon

Amazonでは出店するセラーに対して特定商取引法に基づく表記を求めている他、
リテール部門があるため、自身でも特定商取引法に基づく表記を定めています。


参照元:特定商取引法に基づく表示
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 通信販売に関する業務の責任者の氏名
  • 販売価格
  • 返品などの対応
  • 返金に関わる債務
  • 商品引渡時期
  • 支払い方法
  • 支払い期限
  • 販売数量の制限、販売の条件など

特定商取引法に基づく表示(セラー向け)

  • 販売業者(正式名称)
  • 店舗責任者名(代表者、または当該表示に責任を有する担当者の氏名)
  • 店舗名
  • 住所(番地およびビル名等も明記してください)
  • お問い合わせ先電話番号
  • 許認可情報(古物営業許可証など、該当する場合のみ)

EC-CUBE

EC-CUBEでは特定商取引法に基づく表記のページが設置されており、
管理画面から入力することでページの設置が完了します。

  • 販売業者
  • 運営責任者、所在地、連絡先
  • 商品以外の必要料金
  • 注文方法
  • 支払い方法
  • 支払い期限
  • 引渡し時期
  • 返品・交換について

楽天ブックス

楽天ブックスは楽天が自社で仕入れ販売を行っているため、特定商取引法に基づく表記が設置されています。


参照元:特定商取引法に基づく表示
  • 販売価格
  • 送料
  • 支払い方法について
  • 納期・お届けの目安について
  • 返品について
  • 店舗情報

まとめ

ECサイトにおける特定商取引法に基づく表記については
(1)広告の表示義務、(2)返品特約の2つをしっかりと対応した上で、クーリングオフ制度と通信販売における返品ルールについて、
問い合わせが発生した場合に説明ができるようにしておきましょう。

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