相場より安くリプレイスできる?
これまでたくさんのお客様のシステムの移行、リプレイスをご支援させていただきましたが、多くのお客様から「前回のシステム選びは失敗した!」とか、「ベンダーを変えたい!」というお声をいただきます。今、この記事をご覧いただいているお客様の中にも、ベンダーに対して満足できていないお客様も多いのではないでしょうか。
お客様がシステムやベンダーに対して「失敗した」と感じられているポイントは、主に構築時の齟齬とリリース後のベンダーの対応に分かれます。構築時の不信感は、要件定義においてしっかりしたコミュニケーションが図れず、お客様がイメージしたシステムを構築してもらえなかったり、リリースが遅れたり、バグが出たりというものです。リリース後は、対応のスピードが遅かったり、追加開発の費用が高いと感じた場合が不信感につながるようです。
今回は、カスタマイズを伴うリプレイスの失敗を防ぐために、どのようにベンダー選定を行い、プロジェクトを進めるべきか、ご説明させていただきます。
ステップ1-リプレイスの目標を明確にする!
まず当社がお客様からご相談をいただく場合にお伺いするのが、なぜリプレイスを検討しているかです。
一般的には、「売上を上げたい!」 「デザインを変えたい!」 「使いやすいシステムにしたい!」などのご要望をいただきますが、これだけでシステムを選んでしまうと、なんとなく変わった気にはなりますが本来の目標が達成できたかどうか分かりません。
目標の立て方としては、「ステップアップメールを配信できるようにし、既存会員を活性化し、売上を150%に伸ばしたい」 「よりお客様が使いやすいようにデザインを変え、購入率(CVR)を1%上げたい」 「受注のオペレーションを自動化し、2人で作業ができるようにしたい」というのが、正しい設定です。
目標を明確にすることで、目標達成を行うためのロジックを考えることができるとともに、目標達成に必要なシステム要件を洗い出すこともできます。
システムのリプレイスで失敗するお客様は、このフェーズを飛ばし、システム会社からの情報収集を通して、なんとなく良いベンダーを選んでしまう傾向があります。しかし、システム会社はシステム構築のプロですが、ECの事業全体のプロではないので、結果的に目標達成とは関係のない機能に大きな投資をしてしまいます。
ステップ2-すべての要件を洗い出す!
目標が明確になったら、システムのリプレイスを通して何を実現したいかを具体的に機能要件に落としていきます。
一般的にユーザーが利用するフロント画面の仕様に注目しがちですが、重要なのは管理画面側の仕様です。例えば、新商品に「New」というフラグを立たせる場合、手動でフラグを設定するか、自動でフラグを設定するか、自動の場合にはどういう条件でフラグを設定するかなどを決める必要があります。
オペレーション側はオペレーションの人間が頑張ればよいと思われるかもしれませんが、本来注力すべき集客のための業務が圧迫されるだけではなく、ミスの発生や管理コストの増大にもつながります。
ECはお客様毎に運用が異なるため、どのシステムを選んでも手動の機能は多いのですが、実際のオペレーションに即して、どの機能が自動で行われると、ミスが減り、オペレーションが楽になるかを考えることが重要です。
なお、このフェーズでは、システムに盛り込みたい機能をできるだけ多く出すのが重要です。予算がオーバーする場合には、ステップ3のコンペの中で削ることもできます。
ステップ3-ベンダーのスコープを決め、コンペを行う!
要件が決まったら、RFP(提案要求書)にコンペの条件を記載し、ベンダーに提案依頼を行います。
この際に重要なのが、ベンダーに何を求めるかを決めることです。もちろん、予算が無限にあれば分析から戦略立案、システム開発から運用サポートに至るまですべてを期待したいところですが、実際には予算内で重視するポイントを決める必要があります。私としては、マーケティングの戦略を一緒に考えてくれるベンダーがお勧めです。
一般的なコンペの流れは下記の通りです。
- ①ベンダーにコンペ参加の依頼をする
スコープに合ったベンダーをWEBで探します。有名そうな会社は安心感がある一方、構築金額も高いことが多いので、規模が小さい会社にもお声がけすることをお勧めします。 - ②NDAを締結する
NDAを締結する。 - ③「RFP」「機能要件一覧」を送る
「RFP」「機能要件一覧」を送る - ④ご挨拶も兼ねてRFPに対する質問会を開催する。
リプレイスの目的やベンダーに求める提案内容を中心に、RFPの内容を説明します。
各社、競合に提供したくない情報もあるので、ベンダー毎に個別に時間を確保するのがベストです。 - ⑤提案会(デモを含む)を開催する
提案書作成の時間として、質問会と提案会の間は2週間程度間を空けることが望ましいです。
提案会は、提案とデモに30分、質疑応答に20分程度が一般的です。
なお、質問会同様に、会社ごとに個別に時間を確保するのがベストです。
ステップ4-自社に適したベンダーを選ぶ!
コンペで提案が出そろったら、ベンダーを選定します。
今回のように、カスタマイズを含んだシステム開発で注目すべき最大のポイントは、開発費用感です。
開発費用感が高いところは、一般的に追加カスタマイズ費も高い傾向にあります。使い始めてからも、手軽に追加カスタマイズが行える方が、良いシステムを創りやすいです。また、開発費用が高い会社は外注している場合も多く、その後のサポートも手薄になることも少なくありません。
絶対にやってはいけないのが、サイトのデザインや標準機能の量でシステムを選ぶことです。フロント画面のデザインは、どのシステムでもたいていは自由に変更することができます。また、標準機能が多くても、使わない機能が多ければ無意味ですし、カスタマイズの際の影響が大きくなるため、開発費とバグの増大に繋がります。
標準機能だけでシステムを使う場合にはメリットとなっても、カスタマイズを行う場合には機能の量が仇となる場合もあります。
なお、コンペ後に生じた疑問は必ず解消しましょう。「発注してから確認すればいいかな?」と思ったことでも、発注の前に確認しておくことで、より良い条件や提案を引き出すことができます。
また、見積が予算をオーバーしている場合も、機能の削減を念頭に、ベンダーに率直に相談しましょう。値引きで対応してくれることもあります。。
ステップ5-要件の詳細を話し合い、構築する!
ベンダーが決まったら、構築フェーズに入ります。
構築フェーズは一般的に下記の流れで進みます。
- ①要件定義/システム設計
要件定義では、実際にシステムをどのように構築するか、詳細を決定していきます。
一般的には、機能要件に基づき口頭で細かく決めていきますが、お客様の担当の方がシステムに詳しくない場合には、画面設計を見せてもらいながら要件定義を進めていくことをお勧めします。 - ②デザインの調整
デザイン案はデザイン制作会社(システム会社の場合もある)から提案してもらいますが、お客様の方で予めベンチマークとなるサイトや重視するポイントなどを伝えておくことが重要です。デザインのベンチマークがない場合、なかなかイメージするデザインにならず、調整に時間がかかってしまいます。また、マーケティング面のアドバイスは積極的に提案してもらうようにしましょう。 - ③構築(システム会社の役割です)
構築はシステム会社にお任せです! - ④受入テスト
システムが完成したら、お客様自ら動作確認を行いましょう。動作に問題があれば、すぐに報告しましょう。
通常は瑕疵担保期間といって、納品後に発生したバグなどは半年程度は無償で直してもらえます。
ステップ6-余裕をもってリリースの準備をする!
受入テストが終われば、あとはリリースに向けて準備を行います。
既存システムから新システムにデータを移行しますが、データ移行はシステム会社にも依頼できますし、お客様の社内で行うことも可能です。但し、お客様の社内で行う場合、作業方法などを要件定義の段階からベンダーと話し会っておく必要があります。話し会わないと、データーの型の違いなどで、スムーズに移行できない場合があります。。
また、リリース日も決めますが、リリース日はセールや繁忙期を避けた平日の午前中をお勧めします。
システム会社もテストは行っていますが、リリース直後はバグが発生する可能性があります。平日であれば、トラブルが生じた際にもスムーズに対応ができ、損害を最小限に留めることができます。
最後に-お困りの際には、是非ご相談ください!